Column
コラム
跳びやすい「なわとび」第3章
跳びたくなるなわとびとは?
子どもたちが「自分で選び、自分で創れるなわとび」という環境が整ったとき、私たちは次の問いに直面しました。
「子どもが自分から“跳びたくなる”って、どういうことなんだろう?」
“跳びやすい”は、機能。
“創れる”は、自由。
でも、その先にある“跳びたい”という気持ちは、もっと感情に近いものです。
それを突き動かすのは、楽しい・かっこいい・自慢したい・誰かに見せたいといった、子どもたちの純粋な気持ち。
つまり、私たちが目指すべきは「跳べるなわとび」ではなく、「跳びたくなるなわとび」だったのです。
感情を動かす体験
私たちは改めて、機能性ではなく感情を軸にした設計に挑戦することにしました。
色が選べる。形が違う。手触りが気持ちいい。誰も持っていないデザイン。
それだけでも子どもたちは自然と目を輝かせ、「創ってみたい」と感じます。
たとえば、
- ビーム(なわ)に特製を加えたことで、「跳んでみたい!」という反応が増えました。
- ボディにキャラクター刻印を施したバージョンでは、「ぼくのは○○仕様なんだよ!」と友達に話す子も。
- パーツ同士の組み立てを“カチッ”と気持ちいいクリック感にしたことで、「組み立ててるだけでワクワクする」と言ってもらえるようになりました。
子どもにとって「跳びやすさ」はもちろん大切ですが、“跳んでみたい”と思う体験が、行動に直結するのです。
創ったら跳ぶ!
私たちはこの“跳びたくなる”なわとびを、なわとびイベントでテストしました。
すると、今まで苦手意識を持っていた子が、自分でカスタムしたなわとびを手にした瞬間、照れながらも「ちょっとだけやってみる」と言い出しました。
“失敗してもいい”“自分の縄だからちょっと遊んでみたい”
この気持ちが、跳ぶきっかけになる。
数回跳んで成功すると、もっと跳びたくなり、すぐに周りの友達や親に見せます。
「お母さん見て!」「二重とびができた!」と輪が広がっていく。
“跳びたい”が“見せたい”に変わり、子どもたちの中になわとびの価値が自然と広がっていく——その姿を、私たちは目の当たりにしました。
なわとびは道具であり、メディアである
私たちが目指していたのは、「跳ばせる道具」を作ることではありません。
子どもたちの「やってみたい」を引き出し、その中で失敗も成功も楽しめる場を提供すること。
なわとびという一本のロープが、自己表現のメディアになり、友達とのコミュニケーションツールになり、達成感や挑戦心を育てる装置になる。
そういう未来を見据えて、私たちは今日も一本一本のなわとびと向き合っています。